サンゴの白化

スティーブ・ワーブロー | 2017年7月25日

サンゴの白化

2005年、米国では大規模の白化現象により、サンゴ礁の半分が失われました。科学者たちは、二度とこのような事象を起こさないことを決意しました。

活気と活力に溢れていたサンゴ礁が水中で色褪せたゴーストタウンと化し、世界の生物学的多様性を脅かしたのです。この30年程に亘って、ガラパゴス諸島、西太平洋コーラルトライアングル、カリブ海で起きた大規模漂白現象は科学者たちに警鐘を鳴らしました。科学者たちは、益々温暖化するエルニーニョ気候サイクルにおける、礁生態系の漂白からの回復力について危惧してきました。

サンゴ礁は、繊細なバランスで生息する小さな有機体の巨大な居留地です。サンゴポリプはイソギンチャクやクラゲの親戚で、水中で触手をヒラヒラさせて食べ物を捕らえて引き込みます。ポリプはコップのような外骨格を構築し、その柔らかい体を保護しています。何十億という骨格が石のような礁を形成し、ポリプだけでなく、何千という魚類、甲殻類、その他の海洋生物を保護しているのです ‐ 実は、海洋生物の25%がサンゴ礁で食物を確保したり、生息地として利用しているのです。

サンゴ礁に生息する住民のなかでも、最も小さいのが生態系の要である褐虫藻や微細藻類です。要塞を連想させる外骨格のなかでサンゴは、サンゴの呼吸から排泄される二酸化炭素や栄養分を光合成に利用する褐虫藻や微細藻類の住処としても機能しています。光合成のプロセスを通じて、藻類はサンゴを維持する糖分、脂肪分、酸素を生成しています。

但し、水温が上昇しすぎると、藻類は毒性のある物質を発し、これによりサンゴは褐虫藻を放出して真っ白に変化してしまいます。藻類から供給された栄養分を奪われると、サンゴは数週間で死に至る可能性があります。サンゴの種類によっては更に速く死滅し、生態系バランスに変動をもたらします。

パナマ共和国、ボカス・デル・トーロに位置するスミソニアン熱帯研究所(STRI) では、博士研究員Dr. Janina Seemannがカリブ海のサンゴ礁白化を研究し、サンゴ礁における人的活動が引き起こす生態系への影響研究の最前線に立っています。彼女の研究は、Dr. Emmett Duffyにより組織された、スミソニアンの詳細で長期に亘る沿岸水と世界中の生命体の調査プログラム「MarineGEO (Marine Global Earth Observatory)」の一翼を担っています。

データが重要

Seemann博士が指揮するMarineGEO研究の要となるのが水質です。ザイレムブランドであるYSI提供のEXOゾンデが彼女の研究をサポートしており、幅広い水質項目の追跡に利用されています。一つ目のEXOゾンデは、パナマのアルミランテ湾に設置されたプラットフォームから継続したデータストリームを収集し、水温、塩分、濁度、pHの季節ごとの変化、プランクトンまたは藻類の異常発生、その他可変要素の概要を提供しています。

Seemann博士とチームメンバーは、2つ目のEXOゾンデを2週間毎に各研究対象地へ持参し、深度、溶存酸素、pH、クロロフィル、濁度など、サンゴや藻類の健康状態に影響を与え得る水質項目にスポットライトを当ててきました。機器の感度は重要です、とSeemann博士。例えば、pH値の僅かな変化であっても、ポリプの石灰化に影響を与えるからです。

湾内の栄養分(クロロフィルを指標として使用)、沈殿物(濁度として測定)、重金属レベルは、人的活動によって大いに影響を受けます。Seemann博士が主とする研究は、各地の礁に人間が与える影響についてです。

「水温をモニターすることで、サンゴ漂白の背景が判明しました。」


The water temperature gave us the reason why the coral was bleaching

指標項目

環境観察と相関する水質データが、Seemann博士の説明する礁の変化を後押しします。


「昨年から今年にかけての水温データを記録してきました」2015年の終わりにSeemann博士がコメントしました。「9月に水温の驚異的な上昇を検知しました。またこれに関連して、サンゴ礁漂白の明らかなエピソードがありました。水温測定により、なぜサンゴ礁が漂白されたのかが判明しました。」


Seemann博士曰く、STRIのポータブルEXOゾンデによって、様々な環境での水質を比較可能となります ‐例えば連結するマングローブ、藻場、サンゴ礁などで測定し‐同日にマングローブの根や藻場がサンゴ礁にもたらす水の浄化効果を測定します。水質測定により、礁を汚染 ‐特に土砂流出 ‐から守るなど、原生林のような隣接した陸生システムがもたらす価値の理解に繋がります。

それがSeemann博士の主なゴールです。森林伐採とバナナ栽培により、膨大な量の栄養分、沈殿物、農薬がチャングィノラ川からアルミランテ湾に流れ込む結果となりました。水柱の栄養分の汚染物質はプランクトンの異常発生を誘発しかねません。曇って濃縮された水はサンゴポリプに食物を提供しますが、それと同時に褐虫藻が光合成に必要な光を奪います。濃縮された水や富栄養状態が海綿や藻類など他の有機体を助け、サンゴを過成長させます。人間の活動が礁に与える影響を予測するには、交換条件を理解することが必須です。

噂を広める

Seemann博士はスミソニアンMarineGEO (Marine Global Earth Observatory)プログラムに最初に携わった科学者の一人です。2013年には世界規模での取り組みが始まりました。STRIは2015年にAndrew Altieri博士の指揮のもと、このプログラムに参加しました。

世界中の研究対象地に設置されたYSIゾンデやその他の機器から収集されたデータは、スミソニアンのウェブサーバーを通じて、ほぼリアルタイムのデータを科学者やご興味のある方々に提供しています。

専門誌の読者からMarineGEO Facebookサイトの訪問者にいたるまで、フィールドからのデータストリーミングを幅広いユーザーにアクセス可能としたことで、MarineGEOプログラムは世界中の関心を集めています。

「公の場に提供したかったのです・・誰でもが理解できるような形で。」


Seemann博士曰く 「環境に何が起きているのかを知りたい一般の方々から、環境NGO団体、政府の政策担当者にいたるまで、データをあらゆる形で公へお届けしたいのです。誰もが理解でき、ネットワークが広がる形で」

YSIプロダクトマネージャーのBrandon Smith曰く、Seemann博士のMarineGEOプログラムでの業績は、良いデータの持つパワーを反映していると言います。「分析ソフトウェアと統合することで、世界中の水質データがほぼ即座に共有可能となり、世界中の環境研究に関する情報ストリームの一部となるのです。科学者、政策担当者、地域の利害関係者 ‐ 究極的には全人類が ‐ 地球の健康状態を左右するような意思決定をする際に、非常にパワフルなツールと言えます。」

Seemann博士は、サンゴ礁は注目とケアを必要としていると言います。「サンゴを失えば、他の有機体 ‐ 魚類、甲殻類、棘皮類等 ‐の生物多様性を失います。有機体は、礁とセットで生きているのです」

私たち人間も例外ではありません。